2010年4月23日金曜日

テヘランの地下鉄にて

テヘランの空港に向かう地下鉄の中、1人の女の子に会いました。

イランは観光客が少なく、外国人はどこに行っても目立ちます。その女の子も東洋の顔立ちをしていて、中国人か台湾人かな、と当初私は思っていました。

乗客が少なくなり車内ががらんとした頃、彼女は私に何か話しかけてきました。彼女の言葉はわからなくても出身を尋ねられているのだろうと思い、「ジャポン」と言うと、彼女は泣きながら私の手をとり、何かを必死で伝えます。

わかったことは、「マザー、ジャパニ」ということ。「お父さんは?」ときいてもよくわからず、周りのイラン人が訳してくれたところによると、「お父さんはアフガニスタン人でお母さんが日本人」ということと、「彼女はあなたにNice to meet youと言っているよ」ということ。

私は、こんな、Nice to meet youを初めて言われました。
彼女に何があって、どんな思いで、この言葉になったのかは分かりません。それに、私がたまたま日本人だったから言われただけです。それでも、彼女の言葉は単なるあいさつではなく、もっと何というか、人として魂のこもったものだったように思うのです。

アフガニスタンという国を訪れる機会があるかどうかわからないけれど(きっと9割ないでしょうが)、それでも、これからこの地名から真っ先に私の頭に思い浮かぶのは、きっと彼女のことだと思うのです。

約1年のあいだ旅をしてわかったことは、どの土地にもそれぞれ血の通った人間が住んでいるということです。パキスタンにいるのはタリバンと自爆テロを起こす人間だけではないし、タイにいるのも赤い服でデモに参加する人々だけではありません。

それぞれの土地で、お茶を飲んで、笑ったり怒ったり人々は仲良くなったりけんかしたりしながら暮らしています。それを感覚としてわかると、あの国にミサイルをぶち込め、とか占領しちまえ、なんてことを簡単に言えない、と思います。

世界がもっと平和になるには、どこでも人々が暮らしているということを知ることが大切なように思います。そんな当然のこと、頭の中で理屈ではわかっていたことを、旅に出て、やっと体でわかったような気がします。

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